ゆる言語学ラジオでちらっと紹介のあったこの本を読みました。
子供の算数における様々な間違いを挙げ「なぜそのような間違いが起きるのか」「子供はどのように数を捉えているか」の考察がされています。また、そのような誤りをした子どもとの向き合い方について筆者の思いが語られています。
特に興味深かったのは第7章「かけ算の順序・かけ算の種類」。
かけ算を8つのパターンに分類しています。(分類をここに書いてしまうのはよくないので知りたい人は本を買ってください。)
そして付録の章ではそれぞれのパターンについて「等分除・包含除」を切り口にもう少し詳細な分析をしています。
「等分除・包含除」については Wikipedia の「かけ算の順序問題」でも触れられています。乗法・除法において基本的な考え方なのでしょう。
ある量が「基準となる量」の「幾つ分」に除されるかを考えるとき、「基準となる量」を求めるのが等分除、「幾つ分」になるかを求めるのが包含除である。 ※上記Wikipedia「等分除と包含除」の章より
具体例を出しましょう。6個入のピノを2人で3個ずつ分けることを想像してください。上記「基準となる量」「幾つ分」と「6個のピノ」の関係はこのようになります。
基準となる量 × 幾つ分 = 6個のピノ
そして、「6個のピノを2人に3つずつ分ける」ときの考え方は問題設定により2通りあります。
問題設定 | 考え方 | 分類 |
---|---|---|
一人分はいくつでしょう | 基準となる量(1人当たりのピノの個数) × 2人分 = 6個 | 等分除 |
何人分でしょう | 3個 × 幾つ分(何人分) = 6個 | 包含除 |
もちろん、これは "何を基準にするか" によって交換可能な概念です。「基準となる量」を2人とし、「幾つ分」をピノの個数と解釈することも可能だからです。
大人からすれば簡単すぎて当たり前のことですが、これがしっかりと腹落ちできていないと、以下の問題における 0.6 ÷ 0.2
の意味することが理解できないと思います。
(a) 0.6L の水を 0.2L ずつコップに入れていく。何杯できるか。
(b) 0.6L の水が全体の 20% であるとき、全体は何Lか。
谷口, 子どもの算数、なんでそうなる?, p.140
自分の子どものころを思い出すと、確か分数や少数の割り算を学んだときに、"計算もできるし、意味も口では説明できる。でもなんかもやもやする" と思って手元のおはじきやブロックを使って何度も確認作業をし、それでもわからなくて泣いた記憶があります。
筆者は、"誤りは必ずしも悪いことではなく、深い理解に繋がり得るもの。本人の思考をよそに誤りを訂正するのでは子どもの学びを失ってしまう恐れがある" という主旨のことを結びで語っています。学びって大事(小並感)。